アートマン
10数年前、母の部屋で『アートマン』というタイトルの本が本棚に収まっているのを、見かけました。そのときは、「アートマンって何だろう? 何か人間に関係があるものかな?」と思い、さして気にもとめませんでしたが、そのときの印象がずっと心の中に残っていました。
「アートマン」は、インド思想の中で、元来、「気息」を意味し、転じて生命の本体として「生気」「生命原理」「霊魂」等の意味に用いられ、更に「万物に内在する霊妙な力」を意味するに至ったといいます。
『チャーンドギァ・ウパニシャッド』では、「アートマン」について次のような描写があります。
「・・・意から成り、生気を体とし、光輝を形相とし、その思惟は真実であり、虚空を本性とし、一切の行為を内包し、一切の欲求を要し、一切の香をもち、一切の味を具え、この一切に遍満し、無言にして、超然としているもの、これが心臓の内部にある私のアートマンである。それは米粒よりも、あるいは麦粒よりも、あるいはけし粒よりも、あるいはきび粒の核よりもさらに小さい。(しかし)この心臓の内部にある私のアートマンは大地よりも大きく、天よりも大きく、これらの諸世界よりも大きい。・・・」(B、14)
このアートマンは、すなわちブラフマン(梵、宇宙)に他ならない、という「梵我一如」の思想を知ったのは、それからしばらく経ってからのことでした。そして、「宇宙」の図鑑を見ると、時折「アートマン」について考えるのです。
参考文献:『インド思想史』(早島鏡正・高崎直道・原実・前田專学著、東京大学出版会)
『アートマン』(スワーミー・ヴィヴェーカーナンダ、日本ヴェーダーンタ協会)
2005年3月17日
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