昨年は、3月11日の東日本大震災、及びそれに引き続く原発事故、そして次々に自然災害もあり、本当に大変な一年でした。セシウムなどの放射性物質の問題は、これから長期間にわたって取り組んでいかねばならないことでしょうし、また、家や家族を失われた方々の心の傷が癒えるまでには、長い歳月がかかることでしょう。それでも復興に向けて前向きに生活される方々の姿を目にして、しばし自分の生活を振り返りつつ、将来を担う子供たちに、今後どのような生き方を示すことができるのか、とも考えさせられました。経済成長一辺倒だった日本を揺るがすような年でしたが、考え方を変えていく大きな転換期に至っているのかもしれません。
さて、そのような状況下、この「ひとこと」欄の更新も、しばしお休みしておりましたが、昨年もヨーガ教室は少しずつ続けて参りました。ご参加いただいた皆様、有難うございました。やはり実践をする現場は大切で、ひとりひとりに向き合う機会を通して、何かが深まっていくように感じています。それは研究の世界に身を置いて改めて感じたことでもあります。
8月にはスワーミー・メダサーナンダ師(日本ヴェーダーンタ協会会長)をお迎えして、特別研修会を開催いたしました。テーマは「瞑想と幸せ」で、参加者は30名でした。このような時代にあって、どのようにすれば心に平安が訪れるのか、参加者ひとりひとりに参考となるようなお話でした。ちなみに、スワーミージーは東日本大震災の被災地を度々訪れていらっしゃいます。
個人的には、6月と11月に大学で学生さんたちにヨーガを教える機会がありました。学生さんたちは真剣にとりくまれ、「とても気持ち良かったしリラックスできた」といった感想をもらいました。学生さんは素直で吸収力もあり、また感覚的に優れている、と感じます。理論で凝り固まりがちな私の頭を解きほぐしてくれるようで、刺激を受けます。また8月には、東京都内の私立幼稚園の先生方にヨーガを実践させていただく機会がありました。ふだん子供たちに音楽やお遊戯など、様々なことを教えていらっしゃるだけあって、その吸収の早さには、さすが〜と感じました。更に12月にはヨーガの研修会で横浜の方へ参りました。このような機会をいただき、関係の諸先生方に感謝申し上げます。
こうした中で、改めて感じたこと…、それは、今さら(笑)、という感じもありますが、ヨーガをすると気持ちいい!ということです。とりわけ、様々な姿勢・アーサナを行なうと、身体感覚を取り戻す、といいますか、本来の自分に戻るという感覚を得るのです。世界中に広まった理由のひとつはそのあたりなのでは、と思います。論文等でパソコンに向かい続け、からだはバリバリ、なかなか「気」が下に落ちない、寝不足なのにグッと眠れないといった時に、じっくり身体をほぐしていくと、頭のモヤモヤがスーッととれていき、足がポカポカと温かくなり、リラックスの姿勢シャヴァ・アーサナでは、一瞬深い眠りに陥いるほどの気持よさを感じるのです。そしてその余韻は呼吸法、瞑想の中でも持続していきます…。
もちろん頭も身体の一部ですが、思考器官は時として休まらず、疲労をもたらします。そんな時、頭だけでなく、手足や胴体、それを構成する筋肉、骨、内臓など、身体の様々なパーツの集合体である身体全体を刺激し、意識し、感じることを通して、身体全体で感じる、そして考える、そこに回帰させてくれるのがアーサナであり、ヨーガなのでは…と、改めて思っています。